本、絵画、映画と戯れる日々を

本や映画など何かしら作品の感想を書いていきます。

【読書記録】 No.1 「失敗の本質」

今日は本の紹介を私の感想とともにお届けします。本を読んだら感想を書くようにしているので、これからも時々本の紹介は行う予定です。

今日は「失敗の本質」という本をご紹介します。この本は2016年に東京都知事に就任した小池百合子さんの愛読書らしいです。太平洋戦争での日本軍を組織論的に研究したものであり、日本がなぜ敗戦に至ったのかを「組織」という言葉に焦点を当てて考察しています。自分が組織の中で行動するとき、その組織は良い組織なのか悪い組織なのか、判断する材料としてぜひこの本を参考にするとよいと思います。

 

内容

まずアメリカとの6つの戦いをケース別に見ていきます。その後、「失敗の本質」ということでそれぞれの戦いでの失敗に関して、共通する部分を見出し、戦略上、組織上失敗の要因となるものを分析しています。最後の章では、「失敗の教訓」という題で、日本軍が環境変化に対応できなかったこと、組織の自己改革に失敗したことについて述べています。

最終的には良い組織とはダメな組織とは何ぞやということが分かります!

 

 

感想

戦争について述べるのはなかなか難しいですが、過去から学び今に活かす、という点では学ぶものが多くあると思います。その多くあるうちの一つがこの本に書かれているのだと思います。

さて、組織として日本軍はどうだったのでしょうか。この本を読んだ限りですが、組織の上層部の人たちが、客観的に見るということができていなかったのではないかと思います。「客観視する」という一言に尽きると私は思いました。相手の力を見誤って失敗した作戦や、精神第一という考えもかなりあったようです。当然相手にも強い精神力があると考えられますし、自国の力と相手国の力がどういう関係にあるのかを知らなければ正しい戦略が立てられないでしょう。

また、各戦いの反省を次に活かすということもできていなかったようです。外から見れば、前回の反省を次につなげて、進歩しながら戦いを進めていくのが当然と考えられます。アメリカはきちんとできていたようですが、そこも勝敗を分ける大きな要因の一つだと思います。

加えて、組織としてはトップダウン型で、立場が下、もしくは現場の人たちが本部に意見を伝えてもそれが全く通らないほどだったそうです。現場の状況を知らない人が最終的な命令を下し、それを現場の人たちが責任をもって遂行するという体制になっていたようです。本部が最終的な命令を下すのはもちろんですが、部下の意見、ましてや現場にいる人たちの意見を全く取り入れないというのはおかしいでしょう。現場を知らないからこそ、現場にいる人の声は大切になってくるのだと思います。この原因の一つがどうやら人間関係らしいです。組織上人間関係は大切ですが、戦いで勝つことを目的としているのに、作戦会議では人情を優先させて誤った作戦をそのまま実行に移すという体質があったそうです。つまり、真剣に議論をしているのでしょうが、それでも空気に流されてしまうといったことがあったのだと思います。

さて、ここからが大切になりますが、組織の体制としての失敗を現在に活かせているのでしょうか?国家規模の組織もそうですが、比較的小さな規模の組織でもこの本から学べることはたくさんあったと思います。環境の変化に対応する(そのために何をしたら良いのかも含めて)、組織を自己改革させていく必要がある、反省を次に活かせるような環境づくりなどです。何回も読むと自分の頭の中で整理されて、失敗を分析するとはこういうことか!というのが見えてくるのではないでしょうか?

 

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)