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【物理】【統計物理学】格子比熱について

なかなかこういう記事を書くというのは大変ですね。骨の折れる作業ですが、その分理解が深まることもあり、細々とでもいいので続けていけたらなという感じです。もしもっとほかの内容も見たいという方がいらっしゃいましたら、スターなり、コメントなりで反応いただければ僕の理解している範囲で書くつもりです。そんなに多くのことが書けるわけではないですが、そういうきっかけを作って勉強するのもありかなと思います。特に反応がなくても、将来の自分が忘れたとき用のメモとして書くのであまり変わりはないですが。

 

さて、今回は統計力学の格子比熱について、勉強したものを定性的にまとめてみようと思います。

詳細な計算はここには書けないので、要点だけを整理して書き留めることを目標にします。

 

実験事実

まずは、実験事実から書きましょう。

・十分高温では(古典統計で正しい結果が得られるような範囲では)デュロン・プティの法則というものが成り立ち、物質の種類に依らず、比熱はある値に収束する。

・温度を下げていくと比熱の値は減少していき、十分に低いところでは温度の3乗に比例して減少することが分かっていた。

 

古典統計で計算すると、確かにデュロン・プティの法則が得られる。ただし、古典統計が使えるのは十分高温の範囲だけである。言い換えると、量子性があまり効いてこない範囲ともいえる。

では、どうすればよいのだろうか

(ちなみに、すでにデュロン・プティの法則が分かっていたものの、低温で合わないので、この実験事実を何とか説明しようと当時の人達が力を注ぎ、それが量子力学の誕生につながったらしい)

 

量子統計の必要性

今はほとんどまとまっているようだが(勉強中)、(平衡)量子統計物理学の観点で考えればよい。というか、この観点で考えざるを得なくなったというべきか・・・

つまり、ハミルトニアン(エネルギー)を求めて、分配関数を求めて、自由エネルギーを求めて、・・・という感じで、お決まりの流れに沿って比熱を求めるわけだ。

 

どうやったら実験事実が説明できるのだろうかと多くの人が考えたであろうが、今日の教科書に出てくるのが、アインシュタインモデルとデバイモデルの二つだ。

これからこの二つのモデルの内容をまとめればこの記事は終了だ!

 

まずは、結果を書かせてもらうと以下のようになる。最後にもう一度同じことを書くので、知らない人は、そうなんだー程度でよいと思う。

アインシュタインモデル:デュロン・プティの法則を導くことができる(高温極限)。しかし、低温極限でTの3乗則が導けない。(比熱が指数関数的に減少するという結果が出てきてしまう。)

・デバイモデル:アインシュタインモデルを改良したものと捉えてよい。デュロン・プティの法則(高温極限)もTの3乗則(低温極限)も導かれる。

それではどんなモデルなのか見ていこう。

 

アインシュタインモデル

アインシュタインモデルですが、どんなモデルかというと、

1)固体の格子振動を調和振動とみなす

2)各格子にある分子などは独立に振動し、振動方向x,y,zも独立に振動していると仮定する。もっと言うと、各分子の質量はmで等しく、振動数もωでみな等しいとする。

各振動子が独立という仮定はかなり大胆な近似と言ってよいだろう。なぜなら、分子が振動しているならば、その振動が隣の分子の振動に影響を与えることが推測されるからだ。ただ、簡単なモデルから少しずつより正確な形に近づくというアプローチからすれば、素晴らしい近似であろうと思う、だからこそ今も教科書に載っているのだろう。

※重要※

振動数がみな等しくωという所がキーポイントだと思う。

イメージとしてであるが、このためにどの調和振動子も、エネルギーhω/2πが受け取れるまでは励起できない。エネルギーを受け取れるようになるとどの調和振動子も励起できるようになるので、それが指数関数的な変化で表されているんじゃないかと思う。このあと、デバイモデルと比較する。

 

デバイモデル

次にデバイモデルですが、アインシュタインモデルを改良したと先ほど書きました。

どんな風に改良したのかというと↓

「各分子が独立に振動している」という仮定から、格子はいろんな振動数をもって振動していると考えた。

理屈の上ではこう考えたのだが、実際には格子振動を弾性振動で置き換えるということをした。ここからω=ck(cは振動の伝わる速さ、kは波数)という振動数と波数の関係式が出てくる。

まあ、イメージを捉えることを重視すると、格子がいろんな振動数を持っているということは、励起エネルギーが小さくても励起するものもあるし、なかなか励起しないものもあるだろう。格子がたくさん(アボガドロ数程度)あるわけだから、アインシュタインモデルでは存在していたエネルギーギャップがその間を埋めるようになるんじゃないかと思うわけだ。

これを弾性振動で表すと、弾性振動を考えるのだが、連成振動の問題を解くと分かるように(やったけど忘れたという人はこれを機会に復習するとよいかもしれない(僕は復習しないといけなかった))、一つのばねの振動に比べて、それより大きい振動数も出てくるが、それより小さい振動数も出てくる。ばねの数を増やしていけば固有値も増えるが、単振動の振動数に比べて小さい振動数がたくさん出てくるだろうと推測できる。

今までの考えをまとめつつ、アインシュタインモデルと比較すると、

アインシュタインモデルでは励起できなかったエネルギーでもデバイモデルなら励起が可能。アインシュタインモデルはエネルギーギャップが存在し、デバイモデルにはエネルギーギャップが存在しないといってもよいだろう。

だから、デバイモデルは励起が比較的緩やかだと捉えることもできよう。それでTの3乗に比例するというのも納得がいくというかイメージとしては良さそうだと思う。

 

終わり

最後に、二つのモデルから得られる結果を前に書いたことと全く同じだが書いておく。

アインシュタインモデル:デュロン・プティの法則を導くことができる(高温極限)。しかし、低温極限でTの3乗則が導けない。(比熱が指数関数的に減少するという結果が出てきてしまう。)

・デバイモデル:アインシュタインモデルを改良したものと捉えてよい。デュロン・プティの法則(高温極限)もTの3乗則(低温極限)も導かれる。

 

まだ、大事なところが抜けている気がするが、とりあえず今回はこの辺で

黒体放射の話につながっているので、興味のある人は調べてください。

春休みに入ったので、少しだけ頑張って書きたい。特に統計物理学を中心に書いていけるといいなぁという感じ。