本、絵画、映画と戯れる日々を

本や映画など何かしら作品の感想を書いていきます。

【読書日記】 「たゆたえども沈まず」

 原田マハさんの作品は今回が初めて!

最近、美術鑑賞を含め、美術史や画家の伝記などに興味を持ち始めた僕にとって、アート小説は本×美術という、いいとこ取りのジャンルなのだ。この本を読むのが楽しみで仕方なかった。

 

 

 

ゴッホとその弟、そしてフランスで画商として奮闘する日本人2人が主な登場人物。そのうち片方の日本人は架空の人物で、林忠正という人物は実在した人物だそうだ。

最近は、事実と創作を組み合わせ作り上げる作品が好きだ。司馬遼太郎歴史小説もこれと同じだ。

真実というものは、よく分からないものだ。事実は事実としてそこにあっても、その解釈が難しい。第三者はもちろん、当人たちでさえ完全には把握できていないだろう。当人だからこそ、偏見や固定観念というものがつきまとうことだってあるはずだ。

歴史小説をあたかも真実としてみなすには無理があるが、逆に歴史として語られている部分が全て正確で正しいかというと、きっとそういうわけでもないだろう。資料などを調べても限界があるだろう。その分からない部分を想像で埋めていく作業は、リアリティーを求めると難しいと思うが、それができる作家さんはすごい。さすがである。

今回の本のように、事実に基づいた小説というジャンルが面白いのは、実際にありそうなのに、実際どうであったかわからないというところだ。そこには期待が込められている気がする。著者の期待が作品に込められているからこそ、その作品は輝いているのだと感じた。

 

多くの登場人物が志を持っているという点で、この本には励まされた。僕もそれを失いたくないと思う。フランスで画商として成功するためにどれほど苦労しただろうか。負けん気が強くないととてもじゃないが挫折してしまうだろう。この作品は物語だが、実在した人物で、フランスで画商として成功したという事実があるから、より強くそう感じた。

 

読書マラソン

ゴッホとその弟テオ

血縁関係を超えた友情がそこにはあった。それは時に絆として結びつけ、時に有刺鉄線となり縛り付けていた。

たとえ離れていようとも、それが途絶えることはなかった。

ゴッホが死んだ後でさえ、、、

ゴッホにしか描けない、あの情熱的な、しかし冷静な絵画。

それは弟の支援無くしては生まれてこなかった。彼の作品は弟の作品でもあるのだ。

テオは弟として、さらに画商として、兄の作品に価値を見出した。

亡くなった後にようやく価値が見出されたものの、ゴッホの生きた世界は、必ずしも実力の反映されない厳しい世界だったのだ。