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【物理】スピン模型の整理

現在の僕にわかっている範囲で各スピン模型の特徴についてまとめる。

まず、スピンの向きに関する性質によって基本的な3つのモデルに分けられる。

Isingモデル

スピンが上を向くか、下を向くかの2つの値しかとらないようなモデル。

XYモデル

スピンの先が平面上を連続的に回転できるとするモデル。

ハイゼンベルクモデル

スピンの先が球面上を連続的に回転できるとするモデル。

上から順に、スピンの成分数が、1、2、3という風になっている。

成分数をn個に拡張したものを、nベクトルスピンモデルという。

 

 主にIsingモデルを用いて、その中で様々なモデルを見ていく。

各モデルの特徴

1次元Isingモデル

厳密解が求まっている。有限温度での相転移は存在しない。

絶対零度でのみスピンの向きが揃うが、有限温度を持った途端にヘルムホルツの自由エネルギーの値を最小にするのに、エントロピーの効果のほうが大きく効くことからスピンの向きはバラバラになってしまう。

 

2次元Isingモデル

相互作用が最近接相互作用のみで、外部磁場0の場合のみ、厳密解が得られている。

有限温度で相転移を示し、転移温度以下では、自発磁化をもつ強磁性状態になる。

相転移点近傍で、自発磁化や比熱などに異常なふるまいがみられる。(発散など)

外部磁場が存在するときは厳密解が得られていない。

 

3次元Isingモデル

相転移あり

厳密解は得られていない。

 

無限レンジモデル

 有限温度で相転移を示し、かつ厳密解が得られているモデル。

任意のスピンがほかのすべてのスピンと同じ強さで相互作用をすると考える。よって、次元という概念がなく、系の性質は、スピンの数で決まることになる。

現実の磁性体を忠実に再現しているわけではないが、とにかく厳密に解けるということが利点らしい。

転移温度以下になると、自発磁化が生じる。その根本的な理由は、自由エネルギーの最小値にある。転移温度以上では自発磁化が0の点で最小値を取る。転移温度以下では、自発磁化の値が0でないところで最小値を取る。したがって、自発磁化が生じる。

このモデルの相転移は高温側の磁化0の無秩序状態と、低温側の自発磁化を伴った強磁性状態の間で起こる。

相転移が起こるということで、転移温度付近では物理量に特徴的なふるまいがみられる。例えば、帯磁率は転移温度付近で鋭いピークを持つ。これは、転移温度というものをスピンが揃う直前の温度というふうに考えれば直感的に理解しやすい。

帯磁率は温度を少し変えたら磁化がどう変化しますか、ということを表しているので、転移温度付近では温度を少し変えただけで、スピンが揃ったり、ばらばらになったりしてしまう。言い換えると、温度に非常に敏感ということになる。

 

外部磁場を入れると、相転移は見られなくなるらしい。

 

平均場近似

厳密に解けるモデルは少ない。そこで近似を使うのだが平均場近似はよく使われる近似法の一つである。

Isingモデルを例にして考える。

さらに強磁性的な最近接相互作用のみが働くという条件で考える。ある場所のスピンは最近接にあるいくつかのスピンの状態と互いに作用しながら(例えばスピン反転のタイミングで相互作用に変化が生じるはず)、自らの状態も変化することになる。相互作用は揺らいでいるというような表現をする。

自分の言葉に直すと、一つ一つのスピンからの影響を別々に感じ取り、その場所ごとに受ける相互作用は異なってくるはずである。さらに言えば、時間的にも相互作用は変化するはずである。

具体的に言うと、ゆらぎを平均値をとってしまうわけだが、2次元正方格子を考えた時に、その周りには4つ最近接スピンがある。

                    ↑ 

                 ↓ ↑ ↓

                    ↑

例えばこのような感じである。

同じ向きのとき相互作用の値を+1

逆向きのときの相互作用の値を-1

とすると、真ん中のスピンは、2つとは+1の相互作用を、もう2つとは-1の相互作用をしている。しかし、平均を取ってしまうとこれは0になってしまう。つまり、4つのスピンとは等しく0の相互作用をしている(この例だと相互作用していない)と言える。

別の例を考える。

 

                    ↓ 

                 ↓ ↑ ↓

                    ↑

この時は、-1の相互作用3つと、+1の相互作用1つである。

平均場近似で考えると,

真ん中のスピンは、4つのスピンと等しく-0.5の相互作用をしているというふうにみなしてしまう。こうすることで計算が簡単になり、何かしら近似結果が得られるのであろう。まだ、計算をがりがりやっていないのでこれから頑張って確かめないと・・・

 

それで、この平均場近似は面白いことに、無限レンジモデルの結果と同じ形として得られる。

何が同じかというと、言葉だけではわかりにくいかもしれないが、一応自分の頭の整理のために書く。

ハミルトニアンを考えてやって、そこから出てくるスピンの平均値と、その平均値がスピンあたりの磁化であるということから、磁化に関する方程式(自己無撞着な方程式というらしいが)が得られる。

この方程式の形が無限レンジモデルと同じだというのである。それはつまり、外部磁場0では相転移が起こり、・・・といった話ができるということだ。

 

なぜ、同じなのかを考えてみる。というか教科書の内容を咀嚼して、自分の言葉にしてみたい。

キーワードはスピン相関である。

スピン相関とは、ある場所のスピンの向きともう一方の場所のスピンの向きがどの程度揃っているのかを表しているものである。二つのスピン間の距離をパラメーターとしてみた時に、無限レンジモデルがスピン間の距離に関係しない相互作用だったことを思い出してみよう。それは、スピン相関が距離に依らないと言える。

一方で、最近接相互作用は有限距離内で作用するものだと考えられる。したがって、遠くのスピンとは影響しない。言い換えると、スピン相関はスピン間の距離に依存するのである。

まだぼんやりとしたイメージであるが、平均場近似では各最近接スピンとの相互作用を平均しているので、そしてその平均はすべて(2次元なら4つ)の最近接スピンで等しいとしている。範囲は有限であるが、相互作用している相手とは等しい強さで相互作用している。この特徴が無限レンジモデルと平均場近似では一致している。

こういった理由で、同じ形の方程式が出てくるのだろうと考えられるようだ。

これは興味深い結果だなと感じた。

 

長くなってしまったので、今日は以上。