本、絵画、映画と戯れる日々を

本や映画など何かしら作品の感想を書いていきます。

6/11 『翔ぶ少女』 原田マハ

勉強に疲れて、半ば現実から逃げるようにして本を読んだ。今回読んだ『翔ぶ少女』という本は最近僕が好きな作家、原田マハさんの作品だ。読み始めると続きが気になり一気に読み終えてしまった。またひとつ、素敵な本に出会えて心から嬉しく思う。

この感動を伝えられるように感想を書いていきたいと思う。

  •  内容

原田マハさんの小説。サモトラケのニケが表紙に描かれており、とても素敵だ。

震災で両親を失った3人の兄弟姉妹が、ゼロ先生という心療内科のお医者さんの養子になり、力強く生きていくという物語。

主人公の丹華(ニケ)の視点に沿って話が進む。

解説から少し引用すると、

絶望の先に希望を温かく謳いあげる感動作。

である。

ここであまり詳しい内容を書くと、読んだときの新鮮さが失われてしまうような気がするので、内容はここで終えることにして、もっと具体的な話は感想に書くことにする。ネタバレしても大丈夫な方はぜひ、感想も読んでください!!

 

短めの感想は、読書マラソン用に自分なりにまとめ上げたもの。

眺めは、思ったことをつらつらと書いていくもの。

という感じです。

 

  • 感想(短め)

 

心優しい少女である主人公の丹華は、大切な人を想うと背中が疼き、その想いが強くなると羽が生えてくるのだった。この設定のために、現実的な世界観から急にシュールな世界に投げ出される気分がした。

しかし、それは現実世界では目に見えない「想い」を具現化したものなのだ。この「想い」は現実的なものに他ならない。想いを目に見える形で表現するという発想に気付いたときは、著者の表現力の豊かさに感心し、小説のもつ力に圧倒された。

 

私はなぜ本を読むのか、今回読んだ本はそんな問いに答えてくれているようであった。

「本のもつ力を借りて自分の思いを発見する」、それが一つの答えであるように思う。

 

 

  • 感想(長め)

まず、サモトラケのニケについて

ギリシャ神話に出てくる勝利の女神がニケという名前であるようだ。調べてみると、スポーツメーカーのナイキの名前は、このニケが由来になっているらしい。ルーブル美術館に像があるということなので、ルーブルに行きたい欲が高まってしまった。

ニケは翼が生えているという特徴をもつ。このことを反映して、この主人公の丹華も作品の中で翼を生やすことになっているのだと思う。

 

ここで一番書きたいのは、翔ぶということだ。

この翔ぶということに関しては、僕も夢で何度か経験しており、図らずも非常に親近感が湧いた。私の場合は高校生の頃だった気がする。別に空を飛びたいと思っていたわけではないのだが、、、

今でもなぜそんな夢を見たのか不思議だ。しかも複数回見ているのだから、我ながら驚きだ。覚えていることを書いておくか。飛び始めたのは家だった。そんな高くまで飛んだわけではないが、それでも鳥が飛んでいるくらいの高さまで上昇していった。

夢であるにも関わらず、「なんだ、俺飛べるじゃん!」などと間の抜けた考えをしていたことも覚えている笑

起きてからしばらくしてふと思った。そういえば飛べるんだっけ?いや、飛べるわけないじゃん。あっ、なんか夢を見ていたのか、、、飛べないのか、悲しいなぁ。なんて。

飛んだこともないのに、飛んでいる気分を味わうというなんとも不思議な感じがする。よくわからないけれど、好き勝手に夢を見ることができない故、空を飛ぶ夢を複数回見ることができたというのは、僕の心の中では嬉しいことだったりするのだ。またそんな夢を見れる日がくるといいなぁ、と思っていたこともあったが、その思いはしばらくかなっていない。それにしても不思議な体験だなぁと思う。

 

正直な話、今回本を読んだ感想では、これが一番書きたかったことであるが一通り書いたので次に進もう。

 

 次に感じたのは、関西弁ってすごい優しい方言なんだなということだ。

私は関東出身で普段は関西弁を聞かないし、もちろん使うことはない。そんな私は、関西弁は勢いのある言葉なんだろうと思っていた。そういう側面もあるのだと思うが、この本に書かれている言葉を読むと、とても柔らかで、人に寄り添うのにぴったりな言葉だなと感じた。隣の芝生は青いということかもしれないが、関西弁を話せる人が羨ましく思えた。

具体的なストーリーについてあまり言及しなかったが、感じたことを素直に書いた結果こうなった。

 

登場人物についてそれぞれ紹介してみたい。

主人公の丹華から

彼女は本当に心優しい少女であった。特に印象に残っているのは、やはり最後にゼロ先生の息子(優秀なお医者さん)にゼロ先生の手術をお願いしにいく場面だ。それこそ、手術をしてゼロ先生を助けてほしいという強烈な想いが翼となって表れたのだ。

あと、お医者さんになって困っている人たちを助けたいという夢をもつことも素晴らしいことだ。ゼロ先生の背中を追いかけて、先生になりたいという丹華を応援せずにはいられまい。フィクションではあるのだが、、、

 

次に丹華の兄、逸騎(イッキ)

震災が起きた時、母に妹二人を任された長男。物語が進むにつれ、母親感さえ出てくるほど、家事をこなし、面倒見が良い。非常に優れたお兄ちゃんである。こんなお兄ちゃんがいたら、家族はさぞ誇らしいであろう。料理ができるのは羨ましい。というか、好きで料理の道に進んでいる最中で話が終わるので、その続きが見たい。

 

丹華の妹、燦空(サンク)

三人兄妹の末っ子は場を盛り上げようと努めようとする人が多いのだろうか?燦空もそういう描写が多い。

上の子から見ると一見あまり考えていないだろう、と思うことも考えているし、悩みを抱えていることもあるのだろう。ということを教えてくれた。今まであまり考えてこなかったのが恥ずかしい。それでも、下の子が元気だと家族は明るくなるんじゃないかなと思ってしまう。下の子はとにかく可愛いのだ。

 

ゼロ先生

震災で主人公ら3人兄妹を救った心療内科の先生。息子は優秀な心臓外科の先生。震災で母をなくしたことで息子との間に深い溝ができてしまった。

3人兄妹を養子として引き取り、成長を見守り続けている。震災のボランティアとして、診察にも回っている。大事なところで適切な言葉が出てくるのが素晴らしい。ユーモアもあり、子供の扱いもうまい。

 

ゆい姉

ゼロ先生の下で働いている看護師さん。時々ゼロ先生の代わりとして、大切な役割を演じ、子供の支えとなっている。逸騎の初恋相手??と見れる場面がポツポツと出てくる。ゆい姉も大切なことを優しい言葉で紡いで届けてくれている。ゼロ先生の手術を先生の息子さんにお願いしたいという丹華や逸騎のお願いを受けて兵庫から東京まで一緒に行くほどで、物語になくてはならない人物となっている。