本、絵画、映画と戯れる日々を

本や映画など何かしら作品の感想を書いていきます。

生きる上で大切にしたいことが見つかる名著『論語と算盤』(1章〜5章要約、感想)

 6~10章の分はこちら。

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1章 処世と信条
  • 士魂商才は論語で養える

徳川家康の統治の仕方を例として挙げている。論語は実用的な教え。

  • チャンスを待つこと

物事には原因と結果がある。途中で無理やり結果を変えようとしても争いになってしまう。成り行きを広く見渡し、気長にチャンスが来るのを待つのが大事。

これはチャンスを掴めるだけの準備はしていることが前提にあっての話だと思った。

  • 人には平等に接する

適材適所を行う人間の背後には時として企みが潜んでいる。例えば自分の権力拡大に利用することがある。渋沢栄一が望んだのは、人が国の発展に貢献するために適材を適所に置くことだった。

これは配置される側も意識していると配置する側との信頼関係が深まる気がする。

  • 成長のための争いを、後輩が成長するための指導を

理由のない争いはしないが、敵と争ってこそ成長が望める。争いに勝ってやるという気概を持たなければ成長は望めない。

後輩の指導には2種類ある。厳しく接する人と優しく接する人だ。本当に後輩のためになるのは、厳しく指導に当たる人ではないか。優しく接していると後輩の奮発心を損なわせているかもしれない。

後輩をガミガミとせめて揚げ足を取ってやるくらいの先輩の方が後輩は油断しなくなる、と書いてあるがそれは違うと思う。個人的には余計にやる気が削がれるだけというか、揚げ足ばかり撮ってる上司がいる職場なんて今時ブラック企業そのものだと思う。

  • 逆境を受け入れて進む

逆境には2種類ある。一つは自分ではどうしようもできない逆境だ。この逆境はそれが自分の本分であると受け入れるしかない。そして自分を修練するのみ。

もう一つは人の作った環境だ。これは大体が今までの自分の行いによるものだから、行いを反省して、こうしたいという目標に向かって本気で頑張る。

  • 自分を磨く

生活の些細な場面でも自分を磨くチャンスと思って実践する。そして己を知る。欲望のままに振舞っても羽目を外さない。渋沢栄一は「何事も誠実さを基準とする」ことを主義としていた。

羽目を外さないってのが一つのポイントだな。自分の中に基準があってこそ、そのラインが見えてくると思う。渋沢栄一は「誠実に振る舞うこと」を基準にしていたのだな。

  • 調子になるのは良くない

結果が出て調子の良い時と、そうでない調子の悪い時がある。調子の良い時におごり高ぶってはいけない。対処法は「大きなこと、些細なことに対して同じ考え、判断で臨むこと」である。

なるほど、確かにこの対処法さえ持っていれば少なくとも調子の良い時も調子に乗るなと意識することはできるな。何をもって判断するか、ということ自体をよく考えないとね。

 

第2章 立志と学問
  • 精神の向上には強い信仰が必要

渋沢栄一はそれが論語だった。

  • 自ら箸をとれ

些細なことを全力で真面目に取り組めない人は、その先出世しない。豊臣秀吉が成功したのはここにある。些細な仕事でも大きな仕事の一部なのだから誠意を込めて取り組むべきだ。

  • 大きな志は長所短所を考察し、自分の最も得意とするところに向かって進むのが良い

体力、知力、金銭力などいろんな面で確かな見込みが立った上で大きな志を確定させると良い。根幹に据える志が決まったら枝葉となる小さな志を決める。小さい方は常に変わりながら存在するものだが、大きな志からはみ出ていないか確かめる。

  • 信念を持っておけ

成果を焦って大局を見るのを忘れ、目先の出来事にこだわってわずかな成功、失敗に一喜一憂する人が多い。これではいけないのだが、信念を持っていればこういうことに陥らずに済む。

渋沢栄一は30くらいで実業界の人になるという志を立てたが、もっと早く決めていればと悔いている。難しいと思うが見当違いな志は早めに改められたら良いなー。

 

3章 常識と習慣
  • 常識とは言葉や行動が全て中庸にかなうもの。知恵、情愛、意志の3つがバランスを保って均等に成長したもの

知恵が発達していないと物事を見抜く能力、善悪を見抜く力が不足する。それでは学問を修めていても宝の持ち腐れになってしまう。知恵があっても情愛がないと自分の利益だけを考え極端な行動に走ってしまう。悪知恵が働くというやつかな。情愛を持っていてもそれは感情に流されやすいという欠点をもつ。感情を制御するのに意志が必要である。意志が強すぎてもそれでは単なる頑固者にしかならない。

具体的な行動自体は時代によって善と悪変わるかもしれないが、上記の常識に対する考え方自体は時代によらず変わらないものと思って良い気がする。

  • 憎しみながらも相手の美点を知る

何度でも書くが渋沢栄一は国の発展を実業界から進めることを第一に考えていた。そのため、自分の利益しか考えていない人が訪ねてこようともその人が社会に貢献する方法を考えるようにしていたようだ。

  • 良い習慣を身につける

習慣は心にも影響を与え、人格さえも形成する。他人に感染するから注意。

他人に感染するということは、自分も他人の習慣を真似したがるということ。悪い習慣は真似せず、良い習慣は真似しても良いかもしれない。

悪い習慣は「自分に克つ」という心を持って引き締めなけばならない。そうすれば治る。

  • 世の中、志よりも振る舞いで判断されがち

いかに志が良くても、その振る舞いが良くないと世間からは除け者にされる。反対に志が悪くても、振る舞いさえ良ければ周りから評価されやすい。

渋沢栄一は志をどう持つかということについては他の文でこれでもかと説いているので、ここでは振る舞いも志に準じたものでなければせっかくの志も活きないということを言ってるのだろう。

  • 勉強するのと同時に普段の生活からも学ぶ心を忘れずに

知識は普段の勉強で身につけるとして、それを実践に結びつけるには一生をかけて行う必要がある。怠けずに生きなさい。

  • 物事を判断する時は頭を冷静に保って自分を見失わないようにする

常識に照らし合わせながら自問自答して答えを出す。すると正しい立場に近づき、間違った立場から遠ざかることができる。

 

4章 仁義と貧富
  • 物事を発展させたいという欲望とこれを実践していくための道理をバランスよく持つこと

道理とは私利私欲に走らず思いやりを持つことである。

  • 真っ当な生き方によって得られるならば、どんな賤しい仕事についても金儲けせよ。しかし、真っ当でない手段を取るくらいならむしろ貧賤でいなさい

高い道徳を持った人物になりたければ金儲けなどしようと思ってはいけない、というのは学者の誤解である。

  • 自分が立ちたいと思ったらまず他人を立たせてやり、自分が手に入れたいと思ったらまず人に得させてやる。

富を手にすればするほど貧しい人のための事業に乗り出すのは当然のことだ。

  • 真っ当な富は、正しい活動によって手に入れるべきものである。

お金を求めるのは賤しいという考えは改めて。

  • お金をよく集めよく使う

金遣いが荒い人間になってはいけないし、守銭奴になってもいけない。

私が思うに、若いうちは特に知識や経験を身につけるためのお金は積極的に使っていったほうが良いと思った。そうでないと何も身につかないから結局将来的にお金が入ってこないことになる。多少お金を使ってもその分覚悟を持って取り組んだ方が良い人生になると思う。

 

5章 理想と迷信
  • どんな仕事でも「趣味」(自分からやる気を持って、理想や思いを付け加えて実行していくこと)を持って取り組むのが大事

一人前の「趣味」を持って、その「趣味」のレベルを上げていけばそれに見合った成果がもたらされるようになる。「趣味」のある行動であれば、その仕事に心がこもるに違いない。

  • 1日を新たな気持ちで

全てが形式的になってしまうと精神が先細りしていく。

 

まとめ

全体を通して、

  • 自分を磨く
  • 知識と実践をバランスよく
  • 信念を持て

あたりの主張が軸にあると思った。その信念の部分を渋沢栄一論語に求めたということだ。今度は論語を読んでみたい。調べてみるとネット上にも著作権の切れたものが整理されているのを見つけた。よし読むか。

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