本と物理と戯れる

本の感想、物理、その他という感じで書いていきます。どうぞ、よろしくお願いします。

5/22 量子コンピュータが人工知能を加速する

先日の量子アニーリングに関する公開シンポジウムで西森さんや大関さんのお話を伺ってから、量子コンピュータの分野により強い興味が出てきた。

彼らが書いた本を持っている人がいたので、それをお借りして早速読んでみた。一般向けの本だが、量子コンピュータの歴史というと大げさか、量子アニーリングの提唱者が発展の経緯を述べている箇所もあり、読み物として興味深いものだった。ただ、やはり物理学者(見習い)たるもの、それだけでなく、実際に理解したいという思いもある。

それはまた別の本が5/19に発売されたので、そこで勉強したい。

さて、それで本の感想を書こう。以下、四つの観点でまとめてみた。多分本もそんな感じで分けることができるのではないかと思う。

 

量子コンピュータと日本、世界

D_Waveによって開発された量子コンピュータ量子アニーリング方式を採用している。これは本書の著者の一人である西森さんとその研究室の院生だった門脇さんによって提唱されたもので、当時はこんなことになるとは思ってもいなかったらしい。基礎科学とはそういうことがよくあるようだ。他にも、日本人による発明が量子コンピュータには使われているらしいのだが、それらが共鳴することはなかった。

 

現在、量子コンピュータ分野における日本の立ち位置はどうなのだろうか。本書を読んだ限り、日本の保守的な性格がここでも発揮され、遅れをとっているという印象を受けた。北米での熱気はもちろん、中国もトップレベルになりつつあるらしい。中国の勢いは恐ろしいほどだ。このままだといつものように日本人は後塵を拝することになってしまう。なんとかしないといけないのだ。

 

ではどうすれば良いのか。一つの方法は、北米を見習うことであるようだ。真似をするというのではなく、いいところを取り入れる。学術界と産業界で情報が行き交うような体制があるからこそ、今回のようなブレークスルーが起こるのだ。日本ではそれがないから、日本発祥であるものの、応用するまでには至らず、、、そこが日本の課題だ。

 

考えてみると不思議で、企業は最先端の研究をしている人たちとコンタクトをとって、あわよくばそれを使って一儲けしてやろうという発想がないのだろうか。

研究者も自分の研究がもしかしたら応用できるかもしれないと考えることはないのだろうか。

まあ、西森さん曰く好きなことをやっている、ということだったが、そういう中で今回みたいなことがあると頭にいれておくだけでも違うかもしれない。

 

 

量子コンピュータと物理学

量子アニーリング方式のコンピュータは物理学と関わりが深い、切ってもきれない関係にある。イジングモデルという物理の問題を考えるときに扱うモデルを使っているのだ。

 

複雑な問題を単純にして、本質を捉えようというのは物理学分野の考え方の一つであるのだが、その一つにイジングモデルがある。詳しいことは、本書を買って熟読してほしいのだが、それを最適化問題に使うという発想は目から鱗だ。他にもいろんな可能性が秘められているかもしれない。

 

また、量子コンピュータの装置にも物理学が深く関わっていて、超伝導状態を利用することが量子コンピュータの根本にあると考えて良い。別の発想もあって良いと思うが、今回の装置では超伝導状態を利用することで安定した重ね合わせ状態を作っている。この辺の詳しい話も本書を読んで、ごく一部ではあるものの、不思議さ、素晴らしさを味わってほしい。

 

このように、物理学と量子コンピュータは深く関わっているのだ。物理学を学んでいる僕としては、ちょうどいいタイミングで面白いものが世の中に出てきたなと思う。僕が量子コンピュータの世界に足を踏み入れてみたいという欲求も自然ではなかろうか。

 

量子コンピュータは、いわば物理学から情報の世界へ飛び込んだものであるが、それを物理学の世界へ逆輸入することで物理学がさらに発展するという道筋が僕には自然と見えてくる。きっとそう遠くないうちに物理学でも量子コンピュータを使った研究が始まる(と勝手に思っている)。

 

 

量子コンピュータとアカデミック

量子コンピュータは、最適化問題の解を見つけるという作業に特化したものだ。本書に何度も出てきた、つまり強調されていたのが、

最適化問題を解くという特定の作業しかできないから狭い範囲でしか役に立たないかというとそうではない。世の中には最適化問題が山ほどあるので幅広く活用できると期待されている

ということだ。

 

ここではアカデミックでの期待される活用例を挙げよう。

例えば、化学や薬学などで分子の構造の最適化に応用できるらしい。文系分野でも活躍する道はあり、というより文系のためにこそ量子コンピュータがあると言っても過言ではない程だ。

心理学や経済学、金融など複雑なものを扱っているという印象をもっているが、それらの問題の解を見つけるのも量子コンピュータでできる可能性があると本書では述べている。また、僕が面白いなと思ったのは考古学での活用だ。一見何に使うのか、と疑問に思うが、文字認識に量子コンピュータを使うというのだ。最近の考古学は検証に科学技術を活用するようになってきたような気がする。もちろん、自然な流れだと思う。そういう検証によって、面白い結果が出てくることを楽しみにしている。

 

 

量子コンピュータと産業

 量子コンピュータはすでに販売されている。その事実に改めて驚かされる。

さらに、グーグルやマイクロソフトなど、大企業が開発に莫大な資金を費やしており、熾烈な競争が繰り広げられている感がある。これだけのことを行うということは、量子コンピュータの潜在能力に期待しているということだ。

 

では何ができるのだろうか。

 

アカデミックな世界でいろんな活用方法があることを述べたが、主たる活躍場所は産業界かもしれない。交通や配送はまさに最適化問題が悩みのタネになっている。そこに量子コンピュータである。また、医療分野での活躍も期待されている。

 

世の中には最適化問題がたくさんあるのだ。これからは、日常的にそういう問題を探していこうと思う。日常生活を送りながらもそうだが、情報を集めて、こんな問題があるんだというのを、時々このブログにメモしていけたらと思う。